サマーポケッツ 感想・レビュー (後半からネタバレ注意)
keyの最新作「サマーポケッツ」を最近クリアしたので感想。
最初は不安要素が大きかったものの、いざプレイしたら過去作に劣らない良作だったので思い切って感想を書く事にしました。
ただ一番の問題は自身が今までADVゲーの感想記事を一回も書いたことがない事。(うたわれは、SPRGでもあるから…ノーカン)ストーリー主体のゲームでどこまで書けるのだろうか…(´-ω-`)
1,本作の概要やあらすじ
・概要
2016年の12月8日に本作が発売される事が発表。瀬戸内海の離島を舞台にノスタルジックなひと夏の物語が紡がれる作品。
そこから一年近く続報がなかったが、昨年の12月に詳細などが詳しく発表され発売日も決定。そして予告通り6月29日に発売された。
・あらすじ
夏休み、鷹原 羽依里は亡き祖母の実家のある鳥白島へ遺品整理のために来た。 先に来ていた叔母の岬鏡子と二人で遺品を整理する傍ら、羽依里は新しい仲間との島の生活を楽しむ中で夏休みが終わるのを惜しく思うようになった。
2,ネタバレなしで本作の大まかな感想
↑主人公が遺品整理の為、離島に訪れる所から物語が始まる。
まずはネタバレ控えめで書ける範囲の感想から。
学園路線が続いていたkey作品でしたが、今作では夏休みの離島が舞台とAIRを漂わせる作風に近くなったかな?。どことなくあの頃の夏を思い出させるテイストはノスタルジックな気分に浸してくれますね。
key歴が浅い自分が言うのも何なんですが、あの頃key作品を追いかけた人を対象にした原点復帰作品って気もしますね(´-ω-`)。
イラスト絵は今まで担当していたいたる氏ではなく、Na-Ga氏など複数の絵師が担当。いたる絵は癖の強い絵で好き嫌いが強かったかもしれませんが、今回はkeyのキャラっぽさを残しつつ癖の強さがなくなったって感じでしたね。
今作のBGMも安定のクオリティ。OP曲「アルカテイル」、夏の懐かしさを感じさせる「See,You&Me」、涙腺を誘ってくるエンディングテーマの「ポケットをふくらませて」など良曲揃いでした。
日常パートのノリは今まで通り普通に楽しい。年数が経つにつれホモォやエッッなネタが増えてるのは気のせい…多分。
リトバスではサブカルチャーとして筋肉を前面に押していましたが、今作のサブカルチャーは間違いなく裸ですねw。主人公の友達?ポジションである良一は、事がある度に服を脱いでは裸狩りの被害にあっている…。ぶっちゃけ裸ENDとかあっても良かったんやで…(小声)いや、探してないだけで実はあるのかも…
ADVゲーをプレイする前に2,3番目ぐらいに気になると思われる難易度とボリュームですが、過去作に比べるとやや控えめって印象ですね。
まず難易度ですが、日数事に攻略したいヒロインが選べる仕様になってるのでかなり低かったですね。個別ルート突入後はバットエンドに一回も遭遇しないのも、難易度の低さに拍車を掛けてた。むしろバットエンドがあるのかが気になる…
後、ボリュームですがヒロインが過去作に比べて少ない事もあってかAIR以上クラナド未満ぐらいになってましたね。40時間ぐらいはあるので許容点かと。
オートやスキップ、選択肢スキップなどは勿論あるので快適さは時代水準。
と、ネタバレなしで言える範囲はこのぐらいか…。
3,ルート別の感想(ここからネタバレ要注意)
ここからは各個別ルートのシナリオ感想を書いていくのでネタバレ注意!
思った事を淡々と書くだけなので、考察とかは特にないです(^_^;) 。
鴎ルート
行くよ。もう一度、海賊船のある場所まで
最初に攻略したのはお嬢様気質の久島鴎。始めて出会った時から親し気だったり、スーツケーツを引いてたり変わり者って印象が強いキャラ。因みに彼女がこの島に来た目的は10年前に見つけた海賊船をもう一度探す為。
日常パートではメイド服を着て羽依里の看病をするなどノリが良い?。
後半で船を見つけたシーンを境に鴎に関する秘密が明かされていく訳だが、まずは鴎は足の病気で寝たきりになっていた事と、風子と同じように生霊として具現化した事が分かる。あの性格は外の世界を見たいって反動からきたのかな?。
次に海賊船を目指すときに時々入った回想は羽依里の記憶ではなく、鴎の母が書いた小説の内容だったというオチ。最初はてっきり知り合いなんじゃ…?とか思っちゃいましたねw。未完成の海賊船なども物語を現実に再現する為に用意された物。
最後に鴎はもう目覚めないという事実を母から告げられながらも、島の人達と一緒に鴎が夢見ていた海賊船を完成させる。個人的にはひと夏の冒険って感じで割と好きなルートでしたね。
成し遂げれなかった願いを皆で叶えるって言うのも、風子ルートに近い。
それと鴎の存在を皆忘れてしまったのは、七影蝶で具現化した存在の為?。消える瞬間に七影蝶が映ってたのは間違いはないかなぁ…と思う。
紬ルート
探し物です。やりたい事を探しています
灯台で出会う事になる紬ヴェンダース。そんな彼女と共にやりたい事探しをするルート。今思えば他ルートだと登場尺が少なかったヒロインですね。見た目や雰囲気は小毬っぽいなーって思ったけど性格は全然違った。
日常パートは親友である静久も加わり三人を中心とした掛け合いになるが、静久がおっπキャラ濃すぎて他のルートで殆ど登場しないのが勿体なく感じましたねw。
紬の口癖であるむぎゅはkanonのうぐぅを連想した人も少なくないはず。(どっちの方が口癖の発言回数多いんでしょうね…?)
後半に入った辺りから紬は時々ひっそり姿を消す様になり、それが神隠しにあったもう一人の紬が関係する事が分かるが…。
日常パートは同じような展開が続くのでやや退屈と感じた分、終盤の畳みかけは個別ルートで一番感動した場面でしたね。
紬からは現実世界では後一週間しか残れない事を告げられながらも、一生分の思い出を全てやる事にするシーンはグッときたシーン。
夏休みの思い出作りのクライマックスのシーンで流れる「紬の夏休み」は電波っぽい曲にも関わらず、涙腺を腺崩壊させるという変わった曲でしたね( ノД`)。結局もう一人の紬が何故神隠しにあったかよく分かってない自分。
蒼ルート
とにかく、あたしが寝てても放っておいて
雰囲気や言動などが杏っぽい感じがしなくもないキャラの空門蒼。他ルートでの登場率はヒロインで一番多い。
日常パートではむっつりスケベな性格が前面に押されており、ムフフな展開がやたらと多かったですねw。寝ている事が多いのは軽い伏線。
個別ルート突入後以降は目を覚まさない双子の姉である藍を目覚めさせる為に、七影蝶を探す事になる。ここで七影蝶が人々の記憶を留まっている存在が分かるのだが、エロ本を隠し忘れた怨念は「え?」ってなってしまったw。
最終的に藍を目覚めさせる事には成功したが、七影蝶に触れ過ぎた影響で今度は蒼が眠りに落ちてしまう事に。藍と蒼の関係性はしっかり描かれていたが特質するような展開はなかったので、普通が一番しっくりくるルートでしたね。
しろはルート
私にあまりかまわないほうがいいよ
今作のヒロイン枠でもある鳴瀬しろは。リトバスのキャラである鈴と同じく極度の人見知りを患っており、羽依里にはそっけない態度を取る事が多い。スイカバー欲しさにジロジロ駄菓子屋を見てるのが可愛い。
日常パートでは、羽依里としろはが少しずつ関係を築いていく事になる。
しろはがぼっちを選んだのは、自身の持つ未来予知の能力のせいで周りが不幸になってしまうのを避けた為。
最後は溺れる未来を乗り越えて、唯一ヒロインがちゃんとした形で生存してたルート。ただその後はしろはに死んでしまう未来が待ち受けてるわけで…。
今までのkey作品と同じくメインヒロイン枠なので若干消化不良気味で終わり、真ENDルートに持ち越されるのは変わりなかった。
羽依里のトラウマを克服するルートでもありましたが、この話を最後に主人公としての活躍は終わってしまった感。完全に空気化した訳ではないけど、終盤はしろはとうみの二人が中心の話だったしね。
結局、タイトルでヒロインが消えていく演出って何だったのだろうか?。各ルートの最後には再開する演出とかあるけど…。
最終ルート前半
各ヒロインのルートをクリアすると出現するALKAルート。また羽依里が島にやってくる所から始まり、タイムリープ世界である事が確定できますね。
最終ルートで最重要キャラとなるのが「うみ」。サイドキャラかと思われてた人物を主役に持ってくるのは少し意外だったかな。ルートをクリアする度に言動が変わったりなど違和感はあったけど…。
このルートはうみとしろはの二人の成長物語と言っても過言ではない。絵日記と共に島の人たちと一緒に思い出作りをするシーンはまさしく夏休みって思えますね。チャーハンを食べたくなる。
ルート中盤でうみが生い立ちが明かされるが、大まかにまとめると…うみは近い将来死んでしまうしろはに会う為に未来から来た、うみはスマホのある現代から来たのでサマポケの舞台年月は結構古い、ルート事に言動が幼くなっていったのは時間を飛び越える力が弱まってきたから。
だけどその力を限界が近づきうみの存在は、しろは達の記憶から消えようとしてしまうんですよね。(未だに頭の整理付いてない)
サマーポケッツで一番の名シーンだったかもしれない三人で花火を見るシーン。記憶が完全に消えつつも最後の最後でうみが現れるのは分かってたのに、最後の夏休みって感じが凄い伝わって切なかった…( ノД`)。
この後うみの記憶を忘れたまましろはが出産シーンまで急発進するがしろはは結局死亡したしまい、夏休みの無限ループに入りバットエンドになるなんて思わなかったですね…。精神世界に関する話は一番難しい…
最終ルート後半
永遠の夏休みに決着を付ける最後のルート「pocket」。記憶を失った謎の少年「七海」視点で話が進む。正体がうみってすぐ分かるのは置いて置き…
飛んできたのはしろはが未来予知の力を入れる前の時系列。幼少期の時点でしろはは両親を失った事で心を閉ざしてしまっていた。七海はあの頃の記憶を取り戻し夏の思い出がなくなる可能性を覚悟してしろはを救う事にする。
七海(うみ)の正体にしろはが気づくシーン。しろはが未来予知の力を得てしまったのは過去に縋りついてしまったからであり、三人で一緒に過ごした思い出(未来)を伝える事でしろはを苦しませた因縁を終わらせる事ができる。しかし未来予知の力を得ない=今までの出来事(夏休み)が消えてしまうんですよね。
そうして二人は最後の会話を交わしグランドエンディングへ…。
ラストシーンの後に流れるED曲「ポケットをふくらませて」は「小さな手のひら」や「遥か彼方」に匹敵する涙腺崩壊曲。サマポケで積み上げてきた夏休みに対する気持ちが色々込み上げてくる曲でしたね(´;ω;`)
後日談では微かに感じる夏の面影を胸に、羽依里としろはは別々の道を歩んでいくシーンが描かれ、ホッとした気持ちと同時に喪失感も感じましたね。
最後に流れたアルカテイルのfullバージョンは歌詞自体がサマポケの物語を語っており、作品中で過ごした夏の面影を感じさせてくれる。
キャッチコピーの「眩しさだけは忘れなかった」は恐らくタイムリープで過ごした永い夏の思い出を指してるんでしょうね(´-ω-`)。
総合的に見て今作は良作…?
今作の主体テーマとなるのは間違いなく「夏休み」で、色々な人達と過ごすひと夏の物語ってのを表現できてたと思います。(特に紬ルートやALKAルート)kanonやAIRも季節感を感じるテイストでしたが、今作はそれら以上に強かったかな?。
展開自体は過去作をオマージュしたものが多く、良い方向で見れば「原点復帰」、悪い方向で見ればkey作品をある程度やった人には既視感が強いものがあるかもしれませんね。(鴎ルート=風子ルート、ALKAルートの終盤=アフターストーリー中盤、タイムリープetc…)
最終ルートはAIRやクラナドと同じく家族愛を凝縮させたシナリオになり過去作に並ぶ完成度だったと思いますが、うみと花火を見たシーンの後は若干駆け足気味なのも否めなかったですね。これはクラナドにも少し言える話だが…
総合的に見ればAIR~リトバスの様な衝撃性の強い作品では作品ではなかったものの、良作以上のポテンシャルはあったと思います。(でも過去作と同じ点数を付けてるのはリアタイ補正掛かってるんでしょうね…w)
4,総評
ADVゲーの感想ってこんなに難しいなんて…全然書けきれない(´Д`)
長らくkeyは新作を発売してなかったので不安も少なくありませんでしたが、夏を感じさせる作風やBGM、感動シーンをしっかり抑えたシナリオなど良作の名に相応しい出来で、平成最後の夏にプレイできて良かったと思えましたね。
ただ世界観構造が相変らず難しいのはkeyの伝統芸と言うか…。この辺りは考察サイトを見て理解するしかない…(逃げ腰)
点数8,5/10
※余談ですが、サマポケの聖地となったのは香川県にある離島「男木島」。距離的に充分行けそうなのでいつか行ってみたいですね(=゚ω゚)ノ・